小さい角度のsinとtan

1.小さい角度のsinとtan

小さい角度では、sinの値とtanの値がほとんど同じになります。このことは次のグラフを見ていただければ分かります。


y=x*pi/180 (青), y=sin(x) (赤), y=tan(x) (緑) 単位は「度」
Mathematics Analyzer で作成

x=6度でのそれぞれの値は次のようになります。

  x*pi/180 sin(x) tan(x)
x=6度 0.10471975511966 0.104528463267653 0.105104235265676
(x*pi/180との比)-1 1 -0.00182670262920048 0.00367151494555507

(x*pi/180との比)-1では、sin(x)やtan(x)の値をx*pi/180で割り、それから1を引いたもので、誤差の大きさを示しています。

sin(x)の場合では誤差が0.2%以内、tan(x)の場合では誤差が0.4%以内に収まっています。これは計算尺で計算するには十分の精度です。

他の角度ではどのようになるのか見てみます。ここで、「E」は「×10の何とか乗」を表します。例えば-3.92E-12=-3.92×10-12を表します。

角度 sinの時の誤差 tanの時の誤差
1秒 -3.92E-12 7.83E-12
5秒 -9.80E-11 1.96E-10
10秒 -3.92E-10 7.83E-10
1分 -1.41E-08 2.82E-08
5分 -3.53E-07 7.05E-07
10分 -1.41E-06 2.82E-06
1度 -5.08E-05 0.000102
5度 -0.00127 0.00255
10度 -0.00507 0.0103
30度 -0.0451 0.103

この表を見ると、角度の小さい範囲ではsin(x)やtan(x)はx*pi/180という直線で近似できることが分かります。その境目となるのがS尺の左端、あるいはSI尺の右端になる6度付近です。

2.なぜx*pi/180で近似できるのか

前の項目で角度の小さい範囲ではsin(x)やtan(x)はx*pi/180と近似できることが分かりました。それでは、なぜx*pi/180と近似できるのでしょうか。

この関数を微分したいのですが、角度の単位が「度」のままでは微分できません。そこで、三角関数の角度の単位を「ラジアン(Rad)」にしてみたいと思います。すると、x[度]=x*pi/180[Rad]となるので、sin(x*pi/180)とできます。

それでは、sin(x*pi/180)にx=0で接線を引いてみたいと思います。

sin(x*pi/180)を微分するとpi/180*cos(x*pi/180)となります。これより、x=0でのsin(x*pi/180)の傾きはpi/180だと分かります。そして、sin(x*pi/180)にx=0を代入すると0になります。したがって、x=0でy=sin(x*pi/180)に接線を引くとy=pi/180*xとなります。

次に、tan(x*pi/180)にx=0で接線を引いてみたいと思います。

tan(x*pi/180)を微分するとpi/180*1/{cos(x*pi/180)}2となります。これより、x=0でのtan(x*pi/180)の傾きはpi/180だと分かります。そして、tan(x*pi/180)にx=0を代入すると0になります。したがって、x=0でy=tan(x*pi/180)に接線を引くとy=pi/180*xとなります。

以上から、sinの場合もtanの場合もx*pi/180で近似できることが分かります。

3.計算尺での利用

これで、角度の小さい範囲ではsin(x)やtan(x)はx*pi/180と近似できることが分かりました。これを計算尺で利用しようというのがρ°です。

小さい角度のsinやtanの値を求めるには、その角度にpi/180をかければいいのです。これは言い換えれば180/pi=57.2957795130823で割ればいいのです。実際、ρ°は5.73のところに記してあります。計算の仕方も割り算の方法ですよね。

単位が分で、x分の場合は、x/60度として、pi/180をさらにかけます。pi/60/180をかける、つまり、180*60/pi=3437.74677078494で割ります。実際、ρ′は3.44のところに記してあります。

単位が秒で、x秒の場合は、x/3600度として、pi/180をさらにかけます。pi/3600/180をかける、つまり、180*3600/pi=206264.806247096で割ります。実際、ρ″は2.06のところに記してあります。