精度の向上

精度の向上

一般的な10インチ(25cm)の計算尺では、次のように目盛を読むことがよくあります。

ここでは、簡単のために「10インチの計算尺では有効数字3桁で読むことができる」としましょう。それでは、これ以上の有効数字で答えを求めたいときはどうすればいいのでしょうか。まずは1桁有効数字を増やしたいとき、計算尺ではどのように実現できるのか考えてみましょう。

有効数字を1桁増やすには

計算尺に限らず、一般的に言って、尺の長さを2倍にすれば、メモリも2倍刻むことができます。つまり今までは次のような目盛だったとしましょう。

この尺の長さを2倍にすれば、次のように目盛を振ることができます。

つまり、尺の長さを2倍にすることで、2倍の目盛を振ることができ、2倍の精度で答えを求めることができます。

では、同じようにして、尺の長さを10倍にしてみましょう。

このようにすることで、10倍の目盛を振ることができ、つまり10倍の精度で答えを求めることができます。

つまり、有効数字を1つ増やすためには、計算尺の尺の長さを10倍にする必要があります。

実現方法

実現可能か

一般的によく利用されている計算尺の長さは10インチつまり25cmです。2倍の精度が必要なときには、2倍の長さの50cmの計算尺を作成すればいいのです。このような計算尺は実際にあり、20インチ(50cm)の計算尺として販売されています。

それでは、10倍の精度で計算できる計算尺はどうでしょうか。10倍の精度ということは10倍の長さが必要ということになり、10倍の長さが必要ということは、2.5mの計算尺が必要です。これを実現するのは難しそうです。保管するのも大変ですし、操作も大変です。滑尺を動かすことを考えると、計算尺の長さ2.5mだけではなく、その左右2.5mにも滑尺は動きますので、あわせて7.5m分のスペースが必要になります。

それではこのように10倍の精度で計算尺を使って計算することはできないのでしょうか。実は次のような方法が考えられます。

実現方法1

まず一番簡単な実現方法は、尺を分割して計算尺に載せるという方法です。例えば、計算尺推進委員会で公開している計算尺のプログラムResearcherEditionの第5面と第6面は、尺を4分割することで、同じ長さでありながら4倍の精度を実現しています。

実在する計算尺では、20インチの計算尺で目盛を4分割することで、10インチの一般的な計算尺と比べて8倍の精度が出るので、ほぼ有効数字1桁多く求めることができます。

実現方法2

次に紹介するのは、実際に長い尺を作成するというものです。ただ、上記の通り、直線計算尺では現実的ではないので、「尺を円筒状にする」という方法を取ります。つまり長い尺を円筒にまきつける形で計算尺を作り、コンパクトにしています。

これに関しては、東京理科大学のホームページにあるオーチス計算尺で画像を見ることができます。

更に精度が必要なとき

それでは、有効数字5桁で計算したいというときはどうすればいいのでしょうか。さらに有効数字6桁ではどうでしょうか。

上で述べたように10倍の精度で求めるためには尺の長さを10倍にする必要がありました。有効数字5桁ということは100倍の精度で求めることになりますので、100倍の長さ、つまり25mの尺が必要です。さらに有効数字6桁になると1000倍の長さである250mの計算尺になります。これはとても現実的ではありません。

このように考えていくと、計算尺では有効数字4桁程度で求めるのが限界のようです。

それでは、どうすればこういった精度で計算することができるでしょうか。それは「常用対数表」を利用するというのが一つの方法です。よく利用されている「7桁常用対数表」では7桁の対数を知ることができますので、常用対数表を利用することで計算尺よりも精度よく計算することが可能になります。